2010年11月11日 (木)若さゆえの構想と妄想と暴走(その①)
おはようございます。本日の当番、プロデューサーの角和です。
前回までは、初の3Dゲーム企画承認を取り付けるまでの苦労した点をお話して
きましたが、今回は、業務用(アーケード)ゲーム開発ならではのエピソードを
お話ししたいと思います。
当時所属していた会社では、幾つかの専用筐体の商品を出してはいましたが、
やはり多いのは汎用アップライト筐体に接続して使う、基板売りと呼ばれる
商品でしたので、僕としては初めての専用筐体プロジェクトだった事もあり、
取り入れたいネタが湯水の様にあふれ出してきたのは、言うまでもありません。
当時僕達が打ち上げた、一大構想の代表的なアイデアをいくつか紹介します。
①メガネ(当時は、筐体側に固定)による立体視
②50インチ巨大モニターによる、シアター空間
③複数台の筐体を連結しての映像のワイド化
④専用コントローラー
⑤モニター映像とジオラマ(成型品)との映像合成
⑥BOXタイプスピーカーとボディーソニック音響システム
まずは、①ですが、昨年は“3D元年”と言われるほどで、映画館やTVで
取り入れられて賑わって?いますが、当時は専用筐体の業務用ゲームで
数機種と、家庭用でレーザーディスク(・・・知らない人だらけ?まぁDVDの
直径が2倍くらいある映像プレイヤーと思ってください)のオプションで出て
いましたが、まだまだ身近に体験できる機会は少なかったので話題に
なるだろうと、研究用に購入してみました。
早速実際に体験したところ、このプロジェクトの宿命でしょうか、、、映像によって
例の「3D酔い」が起こり、スタッフ一同、やっぱりぐったり。
今回も気持ち悪くなってしまい、昼飯ヌキです。
当時の立体視システムは左右の眼の視差を持たせた30フレームの画像を、
交互に表示して、液晶シャッターのついた専用メガネで左右画像に対して
逆の目を遮蔽すると言う仕組みだったと記憶しています。
ただ、液晶シャッターの切り替わりが遅いせいで、映像の切り替えが視認出来て
しまい、それが僕たちの三半規管?を刺激してしまう様でした。
特に、飛び出しを強調した映像やカメラワークが激しく動く映像は、ものの数分で
気持ち悪くなり、連続コンティニューをして長く遊んでもらうゲームとしては
問題あるだろうと言う事と、それ以前にバグチェックで死んでしまう事が容易に
想像付き取りやめました。
現代の立体視システムでも原理はそれほど変わらないのですが、当時と比べ、
視差画像が高速で切り替えれる様になった事と、どうやら映像を作る側も画面
手前に飛び出すシーンは“ここ一番”で使う様に制限し、手前に飛び出るのは、
○分間に○秒以内にとどめるとか、通常は奥行き方向に立体感をアピール出来る
映像を意識されている様です。
※皆さんも映画館でご解析を!
次に、②の50インチモニターですが、これも、今ほど家庭に大型モニターが
普及してい無かった時代でしたので、アーケードゲームならではの「売り」としては
効果があるだろうと考え、何台かサンプルを入手しました。
当時は確か50インチの大型液晶が無く、プラズマモニターも、国産高級自動車
一台分くらい高価だった様に記憶していますので、海外で結構普及していた
「プロジェクター内臓型」の物を購入。
試作した映像を表示したところ、「おおぉ!!大迫力!!!」と一同賛成。
更にシアター感を出す為、ユーザーからモニターまでの間を1メートル程あけて
配置し、また、ユーザーが空間の中に入っていると感じる様に、屋根と頭上に
ちょっとだけひさしを取り付けてもらったところ、これが現実空間との切り離しに
かなり効果的でしたので、こちらも採用。
※本当は、入口に暗幕の様なカーテンをつけたかったのですが、コストの都合で省略
そして、いよいよ問題の③の筐体の連結構想なのですが・・・
一つの映像を真ん中で2つに分けて出力出来る特殊な機材で疑似的に2台の
モニターをつないでみたところ、これが残念な結果にと言うか、木工で作られて
いるフレームだったので、届いた時からうすうすは、わかっていたのですが・・・。
そのモニターは画面と画面の継ぎ目(映像が映らない部分)が1センチ1センチの
合計2センチも開き、急いでほぼピッタリにつなぐ事ができる物を手配しようとした
矢先に、やはりここ一番出現する本部長が通りかかり、合体しているモニターを
見て一言。
「こんなん、でか過ぎて何処のロケ(ゲームセンターの事)が
2台も買ってくれんねん!アホか!!」
と一喝。
・・・と、言う事で“合体筐体構想”も諦める事になりました。
※いや、あの頃は、バブリー(死語)な時代だったのと僕も若かった事もあり、あちこちでOPENされる
大型アミューズメント施設に触発されて、図に乗りすぎました・・・。
さて、次は④の、ゲームをプレイする為の、いわゆる“コンパネ”と呼ばれる部分の
開発になりますが、これにもこだわりを持って設計をしました。
まずは、入り口とボタン等を配置するパネル部分。
DランドやUスタジオのアトラクションの入り口付近に、壁や天井にゴツゴツとした
岩肌や瓦礫があったりして、雰囲気を盛り上げてくれますよね。
今回の企画でも、探検がモチーフだったので、入口左右には遺跡造形を配置し、
正面パネル部分には幅1.5メートル程のゴツゴツのとした岩肌の成型品を配置。
この岩の造形の生産方法がすごい!
筐体開発の担当者いわく、あまり生産量が多くない物は、職人さんが作った原型
自体に、成型品素材を被せて加熱(だったと思う)して成型品を生産するんですよ、
と。
後日談として聞いた話では、やはり原形が量産中に何回か壊れ、だましだましの
生産をしたので、ロットによって形状に“リアルヒビ”があるそうです・・・愛嬌、愛嬌!
出来あがった物を見たときには、あまりの巨大さとその迫力に、思わず鳥肌が
立ちました。
これが専用筐体ゲーム開発の醍醐味なのです!!
そしてついに、パネル部分に設置するコントローラー部分の開発ですが、これは
これで大変で、一言では語れないほど筐体開発の担当者との苦労や悲しい
エピソードがありまして、筐体開発に興味は無いので早くゲーム開発部分の話を
しろと思われている方には申し訳ありませんが、次回も続きを話したいと思います。
それでは、また。
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