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2011年12月20日 (火)若さゆえの構想と妄想と暴走(その④)

おはようございます。本日の当番、プロデューサーの角和です。

先日までの当番からも報告されていましたが、ベガスでの研修旅行無事終わり、気が付けば既に12月も中旬となっています。
毎年12月中の取締役会の日の頃は、寒がりの僕はロングコートで身を守りながら街を歩いていましたが、旅行先が寒かったせいか、今年はまだ、ジャケットの上にブルゾンを羽織る程度で済んでますね。

・・・と思っていたら、先週末急激に寒くなりました。残念。


さて、前々回の最後に、成形品で作った巨大な顔に、目パチ、口パクの映像を投影して物語をかたる〝ストーリーテラー〟なるギミックを実現するべく、実体的過ぎるのと、その大きさのあまり配置場所に困り、新たな機構を考えないといけなくなったところまでをお話をしましたが、今回はその続きをお話しします。

このストーリーテラーは、時には行き先を見失った旅人の道を示し、弱気になった者を勇気づけ、また、浮き足立った冒険者を戒める精霊と言う設定なんですが、こいつを画面のど真ん中に設置したいと考え、いろんなアトラクションやアーケードゲームの構造を調査したところ、案外簡単にアーケードゲームで良く使われている手法の応用を思いつきました。

それは〝ミラー(いわゆる鏡)〟の活用です。

ミラーは、アーケードゲームではその頃よく使われている手法で、当時は、今の様な大型液晶が無く、ブラウン管に映像を映していましたが、ユーザーと画面の距離を開けたい場合、ブラウン管の厚み分、余計に筐体が大きくなっています。

その解消法として、編み出されたのが、ブラウン管を上向けにして胸元に設置し、その真上に、手前斜め45°に傾けた鏡に映すことで、ユーザー正面から見るとユーザー前方の奥の方に虚像が見えるという構造でした。
おそらく、当時プレイしていたユーザーは、虚像と気付かずプレイしていた人が多かったと思います。

その構造の応用でミラーをハーフミラー(50:50等の割合で、後ろの映像が、〝透け〟て見えるミラーの事)にして、奥にモニター、胸元にジオラマを設置し、あたかも画面の前にジオラマの虚像が浮かび上がるという仕組みを思いつき、試してみる事にしました。

するとどうでしょう。
予想通り、モニター映像の前にジオラマで作ったストーリーテラーの顔が、ぼんやりと浮かび上がっているではありませんか。

よっしゃあ!!です。

後は、目パチと口パクの合成ですが、当初はそれらを別途投影する事で表現しようと考えていましたが、今回発案した構造により、ハーフミラー越しに設置しているモニター側に目と口を表示する事で、ジオラマの顔に表情を付けることにも成功。

かくして、僕たちの目標としていたイメージの映像を再現ができたのでした。

いやいや、文章に書くと簡単にクリアして行っている様に見えますが、この間、ゲーム開発と言うより、日々、メカニカルデザインの部署と、自分がどこの部署の人間か判らなくなるほど基板開発の部署との行ったり来たりの繰り返しでした。

おかげで、これまで社内とは言え、各部署のあまり知らなかったスタッフ達とも親密になれ、また、ハードやメカに関して、いろんな知識を蓄えられ、今回の苦労は、この後の僕の開発者人生に思わぬ収穫を得ることが出来ました。



こうして、このプロジェクトの筐体試作もいよいよ大詰め。
残すところ、

【 ⑥BOXタイプスピーカーとボディーソニック音響システム 】

の、検討のみとなりました。


今でこそ各社ともに音響に関して、それなりのコストをかけた筐体も多くみられますが、当時のアーケードゲーム業界では、開発中はサウンドデザイナーの方々は良く聞く名前のBOX型スピーカーで開発こそするものの、販売時の筐体には耳を疑うくらいローコストのスピーカーで、しかも、スピーカーボックスも無く本体直付けと言う、割り切った?つくりでした。

つねづね開発中と発売後の聞こえ方のギャップが気になっていたのですが、今回は、〝目指せ!テーマパークのアトラクション〟という事もあり、音響関係も新たに設計する事にしました。

まずは、ボディーソニックなのですが、こちらは、いくつかの特性の物を用意してもらい、一番、体に『ズシ~~~ン!』と来るものをチョイス。比較的に簡単に決まりました。

唯一問題となったのがその設置場所。

本当は丁度お腹にヒットする位置に配置したかったのですが、各種コンパネの都合で膝元辺りに配置するしかないという事になり、ちょっと勿体ないなと悩みましたが、それでも、大迫力の音響で、やはり、搭載してよかったと言う気持だったことを覚えています。


次に、BOX型スピーカーです。
これを採用しているのは、限定品ならともかく、量産品のアーケードゲームでは、殆どなかったように記憶していますが、当時所属していた会社の筐体でも同様に初の試みでした。

スピーカーの事を知らない僕は、当初、皆さんが良く聞くアルファベット4文字のメーカー(あの会社ですよ)の物をメカデザイン部署の担当者にリクエストしたところ、鼻で笑われてしまいました。
それもそのはず、業者価格を聞いたところ、当然〝L〟〝R〟の2個が必要なのですが、単体でも筐体で予定していた2個分の予算をはるかに上回る、お話にならない金額でした。

仕方なく、そのメーカーの物を断念し、でも、見かけは肝心でしたので、見た目が似ていてコストが抑えられるメーカーを探してもらったところ、世の中には色んな会社があるもんですね。
パッと見、イメージに近い物を試作してくれるという会社が見つかりました。

早速、そのメーカーのBOXのサンプルをを取り寄せる事にしました。


さて、どんな物だったかは、そのお話はまた次回にしたいと思います。

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