「Game Developers Magazine」Post Mortem(事後分析)第3回
※以下の内容は日本語の原文となりますので「Game Developers Magazine」の英語訳と一部異なる場合があります。
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5つの“正”-開発で上手く運んだこと-
作品の成功した点を5つという事だったので、普通はプレイヤーコントロールがすばらしいとか、グラフィックが革新的!などと語るべきなのですが、本作では、それらは必ずしも成功したとは言い難く、5つめのポイントとしては相応しくないと考えました。
そこで、色々悩んだ結果、もっとも成功したのは「作品へ愛情をそそいだこと」。これに尽きると結論しましたので、いくつかのこだわりについて触れていこうと思います。このセンテンスを読んで、我々が以下に作品を愛し、無駄とも思える労力を、その中に詰め込んで言ったのか?少しでも読者の皆さんに伝わればと思います。
・サイドミッション
サイドミッションの内容は必ずNPCの個性を引き出せるような内容になっており、プレイした人に本作の世界観に深みを与えることが出来るようにこだわっている。メインでは知り得ないが、サブイベントにこだわりを持たせることで、ユーザーがイベントを重ねていくことで、住民の性格や生活を感じることが出来きるようにしました。
・観察とヨークのモノローグ
本作ではメインの進行に関わらず、特定のモノ(店の商品や壁のポスター、NPCの民家の小物など)を観察できるが、この内容は、ヨークの観点からザックに語りかけるメッセージになっており、「実際にヨークがこの対象を観察したときに、彼の感性ではどんな感想を述べるか?」ということを重要視してメッセージを作成しました。遊び込んだプレイヤーがより、彼に共感を覚えて貰うためにです。
・珈琲占い
本編中で、重要なファクターである「珈琲」だが、本作ではユーザーが任意で珈琲占いが出来る遊びも入れている。メイン進行で「珈琲のお告げの通り」という台詞にもあるように、これも設定に深みを与えるため、プレイに取り入れた要素の一つである。
・ウィンカーとカーナビ
ゲーム本編には関係無いものの、車の操作にウィンカーを取り入れています。また、車内にセットされたカーナビもコクピット画面のカーナビと連動してきちんと動いているんです。皆さん気づいていましたか?無意味だけど、こういう部分がリアリティを強調していると本気で考えています。
・ドライブ中の会話
本作では8Km四方のマップを移動するため、長時間車で移動する必要があります。普通は長時間のドライブで、しかも助手席に誰かが同席しているなら、話しますよね?でも、そんなゲームは無かった。そこで、そういう部分へもリアリティを求めるように、会話の要素を取り入れました。ここでもザックという存在は大活躍、彼の存在により単なる独り言ではなくプレイヤーとヨーク捜査官との会話が成り立った訳ですから。
・グリーンベイルの全体マップは…
マップ確認画面で表示されているグリーンベイルの全体像ですが、よーく観察してみると、ケイスンが連れている犬のウィリーの形になっています。ウィリーと言えばケイスンと共に登場し、物語にアクセントを加える存在なのですが、設定的には強烈な隠し設定があったりと、実はかなり重要なキャラクターとなっています。ゲーム本編では、それをじっくりと語るチャンスがありませんでしたので、気づく人だけ気づいてくれるようにコッソリと町の形としてヒントを忍ばせました。
5つの“正”-開発で上手く運んだこと- はここまでとなります。
○スタッフリング
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あとは、ローカライズとボイスオーバーを外部スタッフにご協力いただいて、ほんのちょっとだけモデリングとイベントシーンをアウトソーシングしました。それ以外は、全部地道に作業を行っています。
○開発日数
2004年 9月 企画書作成
2005年 3月 プロジェクトスタート
2005年 10月 プロトタイプ審査
2006年 3月 α版審査 →プラットフォーム変更などでスケジュール延長
2006年 8月 リソース制作に致命的な遅延 →スケジュール延長
2007年 1月 リソース制作終了
2007年 9月 TGSにてトレーラー公開
2007年 10月 β版審査 未承認 →プロジェクト凍結
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2009年 2月 企画見直しと新プロジェクト発足
2010年 1月 マスター承認完了 完成!!
○予算
それほど多くありません。
○開発ツール
デザイナー用メインツール
・SOFTIMAGE XSI 4.2
・Adobe Photoshop CS
プログラマー用メインツール
・Microsoft Visual Studio 2008 Standard Edition
・Microsoft Visual SourceSafe 6.0
自社製開発ツール
・Script Editor(スクリプトエディター)
・Particle Editor(パーティクルエディター)
・Facial Editor(フェイシャルエディター)
・Object Set Editor(配置エディター)
・Model Converter(モデルコンバーター)
・Message converter(メッセージコンバーター)
・Parameter converter(パラメーターコンバーター)
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次回 12月3日公開予定
・メモリ配分と処理速度について
・ライティングと影の処理に関して
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