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2010年11月12日 (金)

「Game Developers Magazine」Post Mortem(事後分析)第1回

今回より「Game Developers Magazine」に掲載された、Post Mortem(事後分析)記事の日本語訳版を掲載致します。全6回の掲載となりますので、お楽しみください。

※以下の内容は日本語の原文となりますので「Game Developers Magazine」の英語訳と一部異なる場合があります。
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2004年の秋口にこのプロジェクトは幕を開けました。 振り返ればもう5年半以上も前のことになります。 我々、アクセスゲームズは2003年末にSPYFICTIONを発売して以降、オリジナルタイトルの開発に恵まれず、1年近くの時間を、次のタイトルを決めることに費やしてしまいました。

しかしながら、その長い充電期間があったからこそ、このような希有なゲームを制作するチャンスを得たのかもしれません。時間を掛けて溜まったクリエイティビティは、その表現の場を求め爆発寸前の状態にありました。そのエネルギーがマーベラスエンタテインメントという大きな起爆剤を得て、Deadly Premonitionという結晶を生み出したのだと思います。

これは必然的な流れであり、我々は決められた道を単純になぞるように、このプロジェクトに取り組むことになったと言えるでしょう。ただし、その道のりは想像以上に険しく、文字通り血のにじむような数年間だったのです。 見えない次世代機のスペックや、マルチプラットフォームへの対応、プロジェクト凍結の危機など、様々な壁が立ちふさがりました。我々はただ、ただ、その苦難に耐え、作品の完成を盲信するしか有りませんでした。

しかし、本物の努力は必ず認められる物だということを、私は知りました。結果として、プロジェクトをやり遂げた我々を待っていたのは、遠く離れた異国の地での嬉しい声の数々だったのです。

 
 
 
 
5つの“正”-開発で上手く運んだこと-

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本作の中で最も成功したと言えるのは主人公像の確立であったと思います。これまでのゲームの歴史の中で、様々なタイプの主人公が作り上げられ、愛されてきました。そんな中で、さらに新しく、今までには存在しなかったタイプの主人公を作り上げることが我々の至上ミッションでした。なぜなら本作はミステリー作品であり、良質なミステリーには、良質な登場人物が欠かせないものであり、中でも主人公は特別だからです。

プレイをした皆さんはご理解いただけるかと思いますが、主人公のヨーク捜査官は見た目はイケメンなのに、中身は変人そのもの、他人の気持ちを無視してズケズケと物を言い、しかもブツブツ独り言を言っている…普通ならユーザーの皆さんに嫌われてしまってもおかしくありません。「ザックって誰だよ?」って。

しかしながら、ヨークはプレイをした全ての皆さんに愛されています。
何故でしょうか?

それは、彼が非常にチャーミングで、頼りになって、そして愛すべき親友であるとユーザーの皆さんが理解してくれたからです。もちろん、我々は何もせず、勝手に理解してもらえたとは思っていません。そこにも重要な仕掛けがあり、それこそが”ザック=プレイヤー”という関係性の発明だったと言えます。

Greenvaleの町で殺人事件の捜査に従事しているヨーク捜査官と、自宅のリビングでポップコーンを食べながらコントローラーを握るプレイヤー。その架け橋となる存在がザックというわけです。

ザックを通じて、プレイヤーとヨーク捜査官が本当の親友になれたとき、初めて狙っていたキャラクター性が確立したと言えます。ヨーク捜査官は、ゲームをプレイするプレイヤーが居て初めて存在することが出来る主人公であり、それこそが我々の目指した新たなキャラクター像でした。プレイヤーの存在を排除して作り上げたキャラクターでは、ダメだということを、我々は知っていたのです。

今まで存在する多くのキャラクター同様に、彼を愛してください。
我々も彼もそれを望んでいます。

ちなみにヨークのスペックは以下…

・ポリゴン数
 13,000

・テクスチャ
 2048*1024(RGB:カラーマップ、A:アルファマップ)
 2048*1024(RGB:ノーマルマップ)
 1024*512(R:スペキュラ拡散マップ、G:スペキュラ強度マップ、B:アンビエントオクルージョンマップ)

・ボーン
 141本(内29本がフェイシャル用、40本が物理計算用)

・LOD
 2段階

・専用シェーダー
 スキンシェーダー/目シェーダー

・影処理
 顔のみ高解像度の影が落ちる処理をしています

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主人公像と同じく、時間を掛けて練り上げたのがストーリーラインと世界観の設定です。企画当初は、完成した作品に比べてもっとアーバンでシニカルな内容でした。また、表現も暴力的で過激きわまりないものでした。おそらく1年間のブランクが我々の思考を暴力的にしてしまっていたのだと思います。

何度かのリテイクを重ね、プロジェクト停止の危機を乗り越え、最終的に今の形にまとめ上げることができました。物語は出来る限り現実感を大切にしつつ、でもどこか夢のような感覚をちりばめるように計算を尽くしました。結果として、実際には現実として描いている部分でも夢のような感覚を与えたり、逆に夢の中にも現実感を与えたりと、二つの境界線を曖昧にすることができたと思っています。多くのゲームが存在するなかで、こういった表現にこだわって取り組んでいる作品は少なく、中でも個性的な存在になれたのではないでしょうか。

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また、このストーリーラインを活かすためにはどうしてもリアリティのある舞台設定が必要でした。そこで掲げられたのが「リアルタイム」「リアルスケール」「リアルライフ」という3つのリアルでした。限られた予算とリソースの中で、これらを実現することは非常に困難で、多くの反対もありました(チーム内からも!?)が、それでもこの3つは必要でした。

まずは8km四方の町を再現するために、北米へ取材へ赴き、メジャーを使って道路や標識、踏切などの距離を測りました。次に24時間の時間を表現するために、架空の町の緯度を設定して太陽の角度や天候の変化を調べました。そして、町の住人達にはゲームに不要なプロフィール(血液型、誕生日、好きな食べ物、好きな曲、嫌いな人物、ファーストキスの年齢など)を事細かく設定し、それらを元に、その人物の24時間の行動表を作成しました。

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例えば几帳面な性格のトーマスであれば、目覚めてすぐにトイレへ行き、用を足した後に顔を洗って歯を磨きます。プレイ中に暇があれば彼の家を覗いてみてください。ちゃんとそういう風に行動しています。さらに、本編では出てきませんがA&Gダイナーの時給なんかも決めてあります。※ちなみに$3.50/h程度、チップ込みで$25.0~$30.0/dayという設定。もちろんGreenvaleの全ての道路には名前も付いています。日本に居ながら、アメリカの田舎町を再現するという無謀なプロジェクトですから、こういった部分が本当に大切だったわけです。それらが、細かく重なり合ってGreenvaleという町を作り上げ、Deadly premonitionという作品にリアリティを加えています。これは我々独自のアプローチなので、他の開発チームにはあまりお勧めできませんが、チャンスがあればやった方が良いでしょう。

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次回 11月19日公開予定
 ・個性的なBGM
 ・キャスティングとボイスオーバー

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