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2010年11月

2010年11月26日 (金)

「Game Developers Magazine」Post Mortem(事後分析)第3回

※以下の内容は日本語の原文となりますので「Game Developers Magazine」の英語訳と一部異なる場合があります。
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5つの“正”-開発で上手く運んだこと-

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作品の成功した点を5つという事だったので、普通はプレイヤーコントロールがすばらしいとか、グラフィックが革新的!などと語るべきなのですが、本作では、それらは必ずしも成功したとは言い難く、5つめのポイントとしては相応しくないと考えました。
そこで、色々悩んだ結果、もっとも成功したのは「作品へ愛情をそそいだこと」。これに尽きると結論しましたので、いくつかのこだわりについて触れていこうと思います。このセンテンスを読んで、我々が以下に作品を愛し、無駄とも思える労力を、その中に詰め込んで言ったのか?少しでも読者の皆さんに伝わればと思います。

・サイドミッション
サイドミッションの内容は必ずNPCの個性を引き出せるような内容になっており、プレイした人に本作の世界観に深みを与えることが出来るようにこだわっている。メインでは知り得ないが、サブイベントにこだわりを持たせることで、ユーザーがイベントを重ねていくことで、住民の性格や生活を感じることが出来きるようにしました。

・観察とヨークのモノローグ
本作ではメインの進行に関わらず、特定のモノ(店の商品や壁のポスター、NPCの民家の小物など)を観察できるが、この内容は、ヨークの観点からザックに語りかけるメッセージになっており、「実際にヨークがこの対象を観察したときに、彼の感性ではどんな感想を述べるか?」ということを重要視してメッセージを作成しました。遊び込んだプレイヤーがより、彼に共感を覚えて貰うためにです。

・珈琲占い
本編中で、重要なファクターである「珈琲」だが、本作ではユーザーが任意で珈琲占いが出来る遊びも入れている。メイン進行で「珈琲のお告げの通り」という台詞にもあるように、これも設定に深みを与えるため、プレイに取り入れた要素の一つである。

・ウィンカーとカーナビ
ゲーム本編には関係無いものの、車の操作にウィンカーを取り入れています。また、車内にセットされたカーナビもコクピット画面のカーナビと連動してきちんと動いているんです。皆さん気づいていましたか?無意味だけど、こういう部分がリアリティを強調していると本気で考えています。

・ドライブ中の会話
本作では8Km四方のマップを移動するため、長時間車で移動する必要があります。普通は長時間のドライブで、しかも助手席に誰かが同席しているなら、話しますよね?でも、そんなゲームは無かった。そこで、そういう部分へもリアリティを求めるように、会話の要素を取り入れました。ここでもザックという存在は大活躍、彼の存在により単なる独り言ではなくプレイヤーとヨーク捜査官との会話が成り立った訳ですから。

・グリーンベイルの全体マップは…
マップ確認画面で表示されているグリーンベイルの全体像ですが、よーく観察してみると、ケイスンが連れている犬のウィリーの形になっています。ウィリーと言えばケイスンと共に登場し、物語にアクセントを加える存在なのですが、設定的には強烈な隠し設定があったりと、実はかなり重要なキャラクターとなっています。ゲーム本編では、それをじっくりと語るチャンスがありませんでしたので、気づく人だけ気づいてくれるようにコッソリと町の形としてヒントを忍ばせました。

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5つの“正”-開発で上手く運んだこと- はここまでとなります。

 
 
 
 
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○スタッフリング

関わったスタッフの総数 48名
プロジェクトの規模(平均スタッフ数) 25名
 
<内訳>
 
ディレクター兼シナリオ兼スクリプト 1名
プランニング兼スクリプトスタッフ 4名
アートディレクター 1名
オブジェクトモデリング 3名
レベルモデリング 3名
アニメーションスタッフ 3名
UI兼エフェクトスタッフ 1名
ツール制作兼ゲームプログラマー 7名
サウンドディレクター 1名
コンポーザー兼オペレーター 1名
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あとは、ローカライズとボイスオーバーを外部スタッフにご協力いただいて、ほんのちょっとだけモデリングとイベントシーンをアウトソーシングしました。それ以外は、全部地道に作業を行っています。

 
○開発日数

2004年  9月    企画書作成
2005年  3月    プロジェクトスタート
2005年 10月    プロトタイプ審査
2006年  3月    α版審査 →プラットフォーム変更などでスケジュール延長
2006年  8月    リソース制作に致命的な遅延 →スケジュール延長
2007年  1月    リソース制作終了
2007年  9月    TGSにてトレーラー公開
2007年 10月    β版審査 未承認 →プロジェクト凍結
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2009年  2月    企画見直しと新プロジェクト発足
2010年  1月    マスター承認完了 完成!!

 
○予算Gdmp_015c

それほど多くありません。

 
○開発ツール

 デザイナー用メインツール
 ・SOFTIMAGE XSI 4.2
 ・Adobe Photoshop CS

 プログラマー用メインツール
 ・Microsoft Visual Studio 2008 Standard Edition
 ・Microsoft Visual SourceSafe 6.0

 自社製開発ツール
 ・Script Editor(スクリプトエディター)Gdmp_015d
 ・Particle Editor(パーティクルエディター)
 ・Facial Editor(フェイシャルエディター)
 ・Object Set Editor(配置エディター)
 ・Model Converter(モデルコンバーター)
 ・Message converter(メッセージコンバーター)
 ・Parameter converter(パラメーターコンバーター)

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次回 12月3日公開予定
 ・メモリ配分と処理速度について
 ・ライティングと影の処理に関して

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2010年11月22日 (月)

【号外】The Game Developer 50

皆さま、こんにちは。
アクセスゲームズ、ディレクターのSWERYです。

先週のことですが、海外のゲーム情報サイトにて「The Game Developer 50」が発表されました。

これは2010年に活躍したゲームクリエイターの中から50名を選出するというもので、[Art] /[Design] /[Programming] /[Business] /[Evangelism] の5部門で各10名ずつが選ばれます。


その[Design]部門、つまりはゲームデザイン部門にて、なんと私SWERYの名前を選出していただきました!!

え?マジ?

なんども頬をつねり、なんども記事を読み返しました。

どうやら、本当のようです・・・ああビックリ!!



今回の選出は海外での評価ですので、ほとんどが「Deadly Premonition」による評価であると断定しても良いでしょう・・・それにしても、今作は振り返るといろいろありました。

発売直前の大手レビューサイトの酷評から始まり、日本国内での最終ボスの動画流出事件・・・あまりに酷い立ち上がりに5年の歳月をかけた人生を否定しそうになったり。


でも、信じていて良かった。


その後、他のサイトで10点満点や高評価をいただき、ユーザーの皆さんからも支持を受け、先日はようやく欧州版の発売にまでこぎ着けることもできました。

時には自分の信念を曲げることも必要ですが、今回は違いました。

信じて、そして信じて、とにかく信じて突き進んだ結果、このような光栄な結果をいただく事が出来たんだと思います。

皆様、本当に心の底から感謝しています。



この結果に満足せず、この後も皆さんを驚かせ、感動させ、夢中にさせるようなゲームを作り続けられたらと思います。

今後とも、大阪の小さなディベロッパー、アクセスゲームズをなにとぞよろしくお願いいたします。

以上、みんな愛してる!


記事はこちら。
 2ページ目の中段にSWERYの名が・・・!?
http://www.gamasutra.com/view/feature/6206/the_game_developer_50.php

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2010年11月19日 (金)

「Game Developers Magazine」Post Mortem(事後分析)第2回

※以下の内容は日本語の原文となりますので「Game Developers Magazine」の英語訳と一部異なる場合があります。
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5つの“正”-開発で上手く運んだこと-

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本作においてのBGMとボイスアクトは、注力した要素の一つですが、その甲斐あって成功できたと実感しています。独特なストーリーや世界観をよりいっそう引き出し、これまでのゲームには無かった雰囲気を持つBGMになったのではないかと思います。

ひと味違うBGMを生み出すことが出来た背景には、作曲者にこの作品の独特なイメージを確実に理解してもらうことが出来たからだと感じています。作曲者に沢山資料を見せたり、イメージしているBGMもサンプルを用意したり、時には口ずさんでみたり、作品を理解してもらうために努力した結果だと思っています。

イメージを伝える努力を最大限に行ったことで、次第に作曲者の頭の中に「GreenVale」という町が誕生し、更にそこに登場するキャラクターの日常が始まったとき、既に生み出される楽曲は自然と「GreenVale」で流れる旋律となった・・・という感じです。

その証拠に・・・のどかな口笛の旋律が印象的で、田舎町を散歩しているような「Beautiful Life」、モノローグで流れ、主人公のミステリアスなイメージを表現した「York&Zack」などは最初のデモの段階でほぼ1回でOKになり、スムーズに採用が決まったBGMで、この曲以外に考えられないというぐらい世界観にピッタリだと思っています。

ただ、試行錯誤と度重なるリテイクの果てに生まれたBGMも多く存在します。特に苦労したのは、冒頭の赤い部屋で聴くことが出来る狂気を表現した「RedRoom」やキャロルが歌うもう一つのテーマソングである「Miss Pinheel」です。これらのBGMはアレンジ、音量調整指示はもちろんのこと、エフェクトの指示、更に細かいところでは、ハイハットの入るタイミングでさえも小節単位で指示したり、かなりのこだわりを持たせていますし、「RedRoom」の狂気のインプロビゼーション部分は、何度も演奏楽器やアレンジを変えてリテイクを繰り返して完成したBGMです。

本作のBGMは、独特な世界観やキャラクター設定に深みを与えることが出来ていると思います。欲を言えば、もう少しBGMが多ければ、尚のこと良かったかもしれません。

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ボイスオーバーもBGM以上に成功した要素だと思っています。

ボイス収録は当時アメリカ/サンノゼにある「WebTone Studio」にて2週間掛けて収録しました(スタジオは、現在Los Angeles移転)。期間中に収録するボイス総数は、オンメモリ、ストリームを含め6000以上存在するので、一日に500程度のボイスを収録必要があります。

2週間といえば長期間かもしれませんが、アクセスゲームズは日本の開発会社なので、限られた期間内に絶対に全てのボイスを収録する必要があり、そのプレッシャーは尋常ならざる物でした。

収録期間中、我々は首輪で拘束され、スタジオに缶詰状態で過ごすこととなったわけですが・・  ヨーク捜査官のように、ホテルと町を行き来しながら、町に慣れ親しんでいく経験が実際に出来たので、その部分も帰ってから作品に活かすことができました。まさに一石二鳥の2週間だったと言えます。

実際にボイスを収録する際には、全てのボイスアクターに演じてもらうキャラクターのイメージ画像を見せ、キャラクター像を作り上げます。もちろんキャラクターだけではなく、全体の世界観や性格、家族構成までも細かく伝えたうえで収録行っていますが、本作に登場する住民は一癖も二癖もある「変人」が多いので、演技指導するにあたっては大変苦労しました。演出が伝わりにくいときは、アクターに直接演技指導するため、ディレクターのSWERY自身がブースで、演技しながら台詞を叫ぶという場面もありました。そうやってキャラクターの魅力を引き出し、作品中に命を吹き込んでいったと言えます。

中でもイメージ通り、いや、それ以上のすばらしい演技を見せてくれたのが、主人公の「York」を演じてくれたKramer氏です。アクセスゲームズが思い描いていた「York」という主人公像をさらに格好良く引き上げてくれた事に大変感謝しています。主人公というだけあって、3000台詞という収録数を5日程度で収録しなければなりませんでしたが、最高の演技を聴かせてくれました。もちろん、ジョージ、エミリー、トーマスなど、他の魅力的なキャラクターを演じてくださったアクターの方々も全員が最高です。

ユーザーの皆さんが、「本当にこのキャラクターがどこかに居るのかも?」と感じてくれたのなら、このキャスティングは大成功という訳です。

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次回 11月26日公開予定
 ・作品への愛情とこだわり
 ・データボックス①

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2010年11月16日 (火)

【号外】口ひげは世界を平和にすると思うかい?

皆さま、こんにちは。
アクセスゲームズ、ディレクターのSWERYです。

先日、欧州版が発売されました「レッド シーズ プロファイル」ですが、今回はちょっと珍しい活動に参加させていただいておりますので、その報告です。

皆さんは「モーヴェンバー」と言うのをご存じでしょうか?

英語で書くと「Movember」と書きます。

これは英語の「口ひげ=Moustache」と「11月=November」を掛け合わせた造語で、オーストラリア発祥の社会活動のうちの一つです。

具体的には11月の間、紳士の皆さんがひげを剃らずに過ごすことで、男性の特定の病気に関する寄付金を募ったり、啓蒙活動を行うというもの。

現在は主に西洋にて活動が広まりつつあります。

これが公式サイト。
http://www.movember.com/

で、この世界的活動に関して・・・

そうです、我がフランシス・ヨーク・モーガン特別捜査官が参加させていただいております。

ヨークと言えばあごひげ!
11月いっぱいは髭を蓄えて、少しでも社会の役に立ちたいと思います。

「私の髭だが女性にはウケがいいらしい。
 汚いという意見もあるが、そんなものは少数意見だ。
 大半がワイルドだと言っている。

 TVドラマでも、よくあるだろう?主人公がシーズン3あたりで
 急に髭を蓄えてワイルドになる。
 あれは女性にウケがいいんだ。

 ハリソン・フォードの役柄で言うなら、ハン・ソロじゃあない。
 インディ・ジョーンズの時のようなワイルドさだよ。
 女性は、時に強引でワイルドな男にあこがれるものなのさ。

 君は、どう思う? 私の髭は世界を平和にすると思うかい? ザック」

 
ヨークが参加しているサイトはこちら。
皆さま、よろしくお願いいたします。

http://uk.movember.com/mospace/667872/

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2010年11月12日 (金)

「Game Developers Magazine」Post Mortem(事後分析)第1回

今回より「Game Developers Magazine」に掲載された、Post Mortem(事後分析)記事の日本語訳版を掲載致します。全6回の掲載となりますので、お楽しみください。

※以下の内容は日本語の原文となりますので「Game Developers Magazine」の英語訳と一部異なる場合があります。
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2004年の秋口にこのプロジェクトは幕を開けました。 振り返ればもう5年半以上も前のことになります。 我々、アクセスゲームズは2003年末にSPYFICTIONを発売して以降、オリジナルタイトルの開発に恵まれず、1年近くの時間を、次のタイトルを決めることに費やしてしまいました。

しかしながら、その長い充電期間があったからこそ、このような希有なゲームを制作するチャンスを得たのかもしれません。時間を掛けて溜まったクリエイティビティは、その表現の場を求め爆発寸前の状態にありました。そのエネルギーがマーベラスエンタテインメントという大きな起爆剤を得て、Deadly Premonitionという結晶を生み出したのだと思います。

これは必然的な流れであり、我々は決められた道を単純になぞるように、このプロジェクトに取り組むことになったと言えるでしょう。ただし、その道のりは想像以上に険しく、文字通り血のにじむような数年間だったのです。 見えない次世代機のスペックや、マルチプラットフォームへの対応、プロジェクト凍結の危機など、様々な壁が立ちふさがりました。我々はただ、ただ、その苦難に耐え、作品の完成を盲信するしか有りませんでした。

しかし、本物の努力は必ず認められる物だということを、私は知りました。結果として、プロジェクトをやり遂げた我々を待っていたのは、遠く離れた異国の地での嬉しい声の数々だったのです。

 
 
 
 
5つの“正”-開発で上手く運んだこと-

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本作の中で最も成功したと言えるのは主人公像の確立であったと思います。これまでのゲームの歴史の中で、様々なタイプの主人公が作り上げられ、愛されてきました。そんな中で、さらに新しく、今までには存在しなかったタイプの主人公を作り上げることが我々の至上ミッションでした。なぜなら本作はミステリー作品であり、良質なミステリーには、良質な登場人物が欠かせないものであり、中でも主人公は特別だからです。

プレイをした皆さんはご理解いただけるかと思いますが、主人公のヨーク捜査官は見た目はイケメンなのに、中身は変人そのもの、他人の気持ちを無視してズケズケと物を言い、しかもブツブツ独り言を言っている…普通ならユーザーの皆さんに嫌われてしまってもおかしくありません。「ザックって誰だよ?」って。

しかしながら、ヨークはプレイをした全ての皆さんに愛されています。
何故でしょうか?

それは、彼が非常にチャーミングで、頼りになって、そして愛すべき親友であるとユーザーの皆さんが理解してくれたからです。もちろん、我々は何もせず、勝手に理解してもらえたとは思っていません。そこにも重要な仕掛けがあり、それこそが”ザック=プレイヤー”という関係性の発明だったと言えます。

Greenvaleの町で殺人事件の捜査に従事しているヨーク捜査官と、自宅のリビングでポップコーンを食べながらコントローラーを握るプレイヤー。その架け橋となる存在がザックというわけです。

ザックを通じて、プレイヤーとヨーク捜査官が本当の親友になれたとき、初めて狙っていたキャラクター性が確立したと言えます。ヨーク捜査官は、ゲームをプレイするプレイヤーが居て初めて存在することが出来る主人公であり、それこそが我々の目指した新たなキャラクター像でした。プレイヤーの存在を排除して作り上げたキャラクターでは、ダメだということを、我々は知っていたのです。

今まで存在する多くのキャラクター同様に、彼を愛してください。
我々も彼もそれを望んでいます。

ちなみにヨークのスペックは以下…

・ポリゴン数
 13,000

・テクスチャ
 2048*1024(RGB:カラーマップ、A:アルファマップ)
 2048*1024(RGB:ノーマルマップ)
 1024*512(R:スペキュラ拡散マップ、G:スペキュラ強度マップ、B:アンビエントオクルージョンマップ)

・ボーン
 141本(内29本がフェイシャル用、40本が物理計算用)

・LOD
 2段階

・専用シェーダー
 スキンシェーダー/目シェーダー

・影処理
 顔のみ高解像度の影が落ちる処理をしています

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主人公像と同じく、時間を掛けて練り上げたのがストーリーラインと世界観の設定です。企画当初は、完成した作品に比べてもっとアーバンでシニカルな内容でした。また、表現も暴力的で過激きわまりないものでした。おそらく1年間のブランクが我々の思考を暴力的にしてしまっていたのだと思います。

何度かのリテイクを重ね、プロジェクト停止の危機を乗り越え、最終的に今の形にまとめ上げることができました。物語は出来る限り現実感を大切にしつつ、でもどこか夢のような感覚をちりばめるように計算を尽くしました。結果として、実際には現実として描いている部分でも夢のような感覚を与えたり、逆に夢の中にも現実感を与えたりと、二つの境界線を曖昧にすることができたと思っています。多くのゲームが存在するなかで、こういった表現にこだわって取り組んでいる作品は少なく、中でも個性的な存在になれたのではないでしょうか。

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また、このストーリーラインを活かすためにはどうしてもリアリティのある舞台設定が必要でした。そこで掲げられたのが「リアルタイム」「リアルスケール」「リアルライフ」という3つのリアルでした。限られた予算とリソースの中で、これらを実現することは非常に困難で、多くの反対もありました(チーム内からも!?)が、それでもこの3つは必要でした。

まずは8km四方の町を再現するために、北米へ取材へ赴き、メジャーを使って道路や標識、踏切などの距離を測りました。次に24時間の時間を表現するために、架空の町の緯度を設定して太陽の角度や天候の変化を調べました。そして、町の住人達にはゲームに不要なプロフィール(血液型、誕生日、好きな食べ物、好きな曲、嫌いな人物、ファーストキスの年齢など)を事細かく設定し、それらを元に、その人物の24時間の行動表を作成しました。

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例えば几帳面な性格のトーマスであれば、目覚めてすぐにトイレへ行き、用を足した後に顔を洗って歯を磨きます。プレイ中に暇があれば彼の家を覗いてみてください。ちゃんとそういう風に行動しています。さらに、本編では出てきませんがA&Gダイナーの時給なんかも決めてあります。※ちなみに$3.50/h程度、チップ込みで$25.0~$30.0/dayという設定。もちろんGreenvaleの全ての道路には名前も付いています。日本に居ながら、アメリカの田舎町を再現するという無謀なプロジェクトですから、こういった部分が本当に大切だったわけです。それらが、細かく重なり合ってGreenvaleという町を作り上げ、Deadly premonitionという作品にリアリティを加えています。これは我々独自のアプローチなので、他の開発チームにはあまりお勧めできませんが、チャンスがあればやった方が良いでしょう。

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次回 11月19日公開予定
 ・個性的なBGM
 ・キャスティングとボイスオーバー

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2010年11月 5日 (金)

【号外】「gamedeveloper誌」日本語訳を近日公開!

皆さま、こんにちは。
『Red Seeds Profile』のゲームディレクター、SWERYです。

先日、「贖罪サンド」の早食いコンテストの模様を報告させて
いただいた所ですが、連続して情報更新があります。

以前に告知いたしました「gamedeveloper誌」の記事に関して、日本の
ファンの皆さまのために日本語訳版を弊社ブログにて公開しても良い
という許可を頂きました。

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掲載内容は「検死解剖(Post Mortem)」という製作過程を振り返る
記事になっております。

如何にして『Red Seeds Profile』が製作されたのか?

どんな点に苦労して、どんな点で成功したのか?

日本語訳版と言っても、元々弊社スタッフが書いたものですから、
どちらかと言うと原語版。
興味のある方は、お時間のあるときにでも読んでくださいませ。

掲載スケジュールは以下になります──

 第1回:11月12日 公開予定

  ・イントロダクション
  ・キャラクター性の構築と設定 ~特にヨーク&ザック~
  ・ストーリーラインと世界観構築 ~当初は過激すぎた~

 第2回:11月19日 公開予定

  ・個性的なBGM 
  ・キャスティングとボイスオーバー

 第3回:11月26日 公開予定

  ・作品への愛情とこだわり
  ・データボックス①

 第4回:12月03日 公開予定

  ・メモリ配分と処理速度について
  ・ライティングと影の処理に関して

 第5回:12月10日 公開予定

  ・物理エンジンの使いどころ
  ・SEとサラウンドについて

 第6回:12月17日 公開予定

  ・スケジュールコントロールとモチベーション維持
  ・データボックス②

全部で6回の連載となります。
ファンの方も、そうでない方も、是非是非お時間のあるときに読んで
いただけると嬉しいです!!

以上、みんな、愛してる!!

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